ダイワメジャー産駒の底力 サドラーズウェルズとの理想的な組み合わせがもたらしたビッグタイトル
血統で振り返るヴィクトリアマイル
【Pick Up】アスコリピチェーノ:1着
わが国で複数のGIを勝ったダイワメジャー産駒は、アドマイヤマーズ(NHKマイルC、朝日杯FS、香港マイル)、メジャーエンブレム(阪神JF、NHKマイルC)、アスコリピチェーノ(ヴィクトリアマイル、阪神JF)の3頭。これらはいずれも母方にサドラーズウェルズを抱えている、という共通点があります。
サドラーズウェルズは、ヨーロッパを代表する重厚なスタミナ血統。英愛チャンピオンサイアーの回数は史上最多の14回を誇り、ガリレオの父、フランケルの2代父にあたる名血です。日本向きの素軽さに欠ける重厚な血統だけに、どの種牡馬と合わせても上手く行くわけではありません。ダイワメジャーはスピード能力に秀でたマイラー血統なので、サドラーズウェルズの重さが足かせにならず、むしろ底力に転化して大レース向きに仕上がるという理想的な構造となります。
2代母リッスンはフィリーズマイル(英G1・芝8ハロン)の勝ち馬。ノーザンファームによって輸入され、これまでに19頭の子孫がデビューを果たし、14頭が勝ち上がっています。そのなかにはタッチングスピーチ(ローズS)、サトノルークス(菊花賞2着)、キングズレイン(ホープフルS3着)、ムーヴザワールド(共同通信杯3着)、ミスタージーティー(ホープフルS5着)が含まれています。
アスコリピチェーノはそのなかの最強馬。母アスコルティは繁殖牝馬として非凡な資質を秘めており、アスコリピチェーノの他にアスコルティアーモ(OP)とアスコルターレ(OP)を産んでいます。母はヨーロッパ屈指の名血であるデインヒルとサドラーズウェルズを2代目に併せ持つという配合構成。これは14戦全勝のフランケルと同じです。この部分に由来する大舞台向きの底力がアスコリピチェーノのセールスポイントといえるでしょう。
血統で振り返る新潟大賞典
【Pick Up】シリウスコルト:1着
父マクフィは英2000ギニーとジャックルマロワ賞を勝ったヨーロッパの一流マイラー。2011年に種牡馬入りし、2017年から日本で供用されています。JRAではシリウスコルトを含め、オールアットワンス(アイビスSD2回)、ヴァルツァーシャル(マーチS)、イミグラントソング(ニュージーランドT)と4頭が重賞ウィナーとなっています。
基本的にはスピードの持続力で勝負するタイプ。それゆえにダートも得意としており、馬場別の勝利数は芝47勝、ダート86勝。ヨーロッパ血統ながらパワーを帯びたタイプです。果敢に逃げた今回は、この血統の強みであるスピードの持続力を活かすことができました。
2代父ドバウィは2022年の英愛チャンピオンサイアーで、2015年の仏チャンピオンサイアーでもあります。父系はドバイミレニアム→シーキングザゴールド→ミスタープロスペクターとさかのぼります。日本ではマクフィの他にモンテロッソ、ベンバトルが供用されており、世界的にはナイトオブサンダー、ザラック、トゥーダーンホットが成功を収めています。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【カーリン】
アメリカとドバイで通算16戦11勝。BCクラシック(米G1・ダ10ハロン)、ドバイワールドC(首G1・ダ2000m)など7つのGIを制覇し、2年連続で米年度代表馬に選出されました。アメリカ史上初めて獲得賞金が1000万ドルを突破した馬でもあります。
種牡馬としても大成功し、米年度代表馬コディーズウィッシュをはじめ、ヴィーノロッソ(米最優秀古牡馬)、マラサート(米最優秀3歳牝馬、同古牝馬)、エリートパワー(米最優秀短距離牡馬2回)、グッドマジック(米最優秀2歳牡馬)、イディオマティック(米最優秀古牝馬2回)、ステラーウインド(米最優秀3歳牝馬)、ネスト(米最優秀3歳牝馬)といったチャンピオンを送り出しています。今年のプリークネスSを制したジャーナリズムも今後の活躍次第ではチャンピオンとなる可能性があります。
スピードもスタミナもある万能型。基本的にはダート向きですが、父スマートストライクは芝・ダート兼用タイプだったので、配合次第では忘れな草賞を勝ったディルガのような芝馬も出します。日本に輸入された後継種牡馬のパレスマリスは、芝向きのジャンタルマンタル(NHKマイルC、朝日杯FS)、ノーブルロジャー(シンザン記念)を出しました。アメリカにおける最良の後継種牡馬グッドマジックは、全兄弟のクラシックホースであるメイジ(ケンタッキーダービー)とドーノック(ベルモントS)の父となり、キーンアイス(トラヴァーズS)はリッチストライク(ケンタッキーダービー)を出しました。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「日本で最も多くの重賞勝ち馬を産んだ繁殖牝馬は?」
グレード制が導入された1984年以降に限るとビワハイジです。英愛首位種牡馬の座についたカーリアンを父に持ち、いとこにマンハッタンカフェを持つ良血。1993年に新冠の早田牧場新冠支場で誕生し、現役時代に阪神3歳牝馬S(阪神JF)を含めて3つの重賞を制覇しました。
繁殖牝馬としては年度代表馬ブエナビスタ、最優秀2歳牝馬ジョワドヴィーヴルをはじめ、アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラ、トーセンレーヴ、サングレアルと計6頭の重賞勝ち馬を産みました。桜花賞馬エンブロイダリーの3代母でもあります。
ちなみに、ビワハイジが勝った阪神3歳牝馬Sで2着だったのがエアグルーヴ。4歳時に年度代表馬に選出され、繁殖牝馬としてもアドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯2回/ドゥラメンテの母)、ルーラーシップ(クイーンエリザベス2世C)など4頭の重賞勝ち馬を産みました。