こちらのコラムでは、レース質予想のパイオニア・立川優馬氏が著書である『「今週勝つ!」を叶える馬券カレンダー』を基に週末の展望を解説していくものとなります。
人気予想家の見解を、ぜひ予想の参考にお役立てください!
時計は速いが上がりは出ない高速持続馬場
(取材・文・構成=編集下M)
編集下M(以下、M) 今週から立川さんのコラム『馬券カレンダー 実践編』がスタートすることになりました。その名の通り、今年1月発売の立川さんの著書『「今週勝つ!」を叶える馬券カレンダー』を実践していく内容です。
立川(以下、立) 私は昨年5月から『ウマい馬券』に参加しているのですが、netkeibaのユーザーの皆さんに「レース質マトリックス」の考え方を知っていただく場所が欲しいと思っていたので、率直に嬉しいですね。
M まずは今週末の話題に移る前に、レース質マトリックスという理論について簡単に説明していただけますか?
立 一言で表すなら「レース自体を予想する理論」になります。「どの馬が走るかな」ではなく、「どんなレースになるかな」という思考から、そのレースに合った出走馬をピックアップする手法を取っていて、「どんなレースになるか」を「レース質」と呼んでいます。
M 今や、レース質という概念もかなり浸透しましたよね。
立 初めての著書のタイトルを決めるためにネットで調べた際には、「レース質」という言葉はほとんどヒットしませんでしたからね(笑)。私の場合、レース質を「枠順(内枠有利or外枠有利)」「脚質(先行有利or差し有利)」「ローテ(短縮有利or延長有利)」の3つのバイアスと、「ペース(ハイペースorスローペース)」を組み合わせて表現しています。各バイアスは、競馬がもつ構造やコース形態、馬場状態、出走メンバーとその枠の並びなどから判断しており、例えば「内枠・先行・延長・スローペース」などと表します。
M さて今週は、クラシック第一弾となる桜花賞。このヒントが4月2週のページに書いてあるわけですね。えーっと、4月2週のタイトルは…「春の福島開幕、芝1800mと芝2000mの出し入れで穴があく」。桜花賞と違うんかーい!

『「今週勝つ!」を叶える馬券カレンダー』(画像は電子版)より
立 …担当編集なんだから知ってましたよね。
M すみません。コラムの初回がGIではなく福島ネタというのが立川さんらしいなと思って、ボケてみました(笑)。
立 レース質を扱う人間にとっては、福島芝2000mがGIなんですよ。それぐらい特徴的なコースです。ただ、ちゃんと桜花賞が行われる阪神芝1600mについても12月3週について触れているので、本をお持ちの方は参考にしてみてください。
M 初回なので、簡単に桜花賞についての解説もお願いできますか?
立 わかりました。前提として桜花賞の基本のレース質は「外枠・差し・短縮」です。京都代替開催で馬場造成が硬かった2020~2023年は内枠先行有利の純粋なマイラーが好走していましたが、本来は中距離質の流れになるレースです。加えて今の阪神は時計が速く、1分32秒前後の決着になるので、絶対的に上がり性能は問われてくるでしょう。
一方で日曜は雨予報が出ています。稍重レベルまで渋るようなら、時計は速いが上がりは抑えられる馬場になるので、ラチ沿いを内目前目で立ち回れる馬が有利になる可能性が高いですね。
M 今年のメンバーだとどうなりそうですか?
立 高速適性に加え、上がり性能が高いエンブロイダリー、追走性能が高いエリカエクスプレスの2頭が人気になりそうですね。上がり+追走性能もあるエンブロイダリーは7~8枠でも引かない限り崩れなさそうです。エリカエクスプレスは追走勝負なので内枠が欲しいところ。
穴なら前走ハイペース経験+短縮で自然に差しに回るリンクスティップですが、上がり性能は未知数なので雨は歓迎。上がり性能と高速適性で言えばクイーンC上位組になるので、マピュースが内枠を引ければ評価します。スローペースからのラチ沿い有利だったチューリップ賞組、超ハイペースからの外枠差しだったフィリーズレビュー組は、能力面で劣るのと桜花賞と適性面が合わないと見ています。
M 枠と天候(馬場)を見極めて最終結論、ということになりそうですね。では本題の(?)福島芝1800m、2000mについてお願いします。
立 なぜ、敢えてGI週に取り上げたのかというと、福島が開幕週だからです。日本の競馬がパリミュチュエル方式である以上、他の人が気付く前に狙うことが重要ですからね。1回福島は前年の3回開催から5か月空くのに加え、エアレーションがないので基本的に芝は内目がよい状態でスタートします。基本は内枠先行有利で、1年の中で、最も内枠BOX作戦がハマりやすいといっても過言ではありません。
M なるほど。では今週の福島芝はひたすら1~6番枠の6頭BOXを買えばいいと。
立 それだけではコラムのネタにはなりませんよ。大事なのは福島芝1800mと2000mの出し入れです。
M 詳しく教えてください。
立 芝1800mは発走地点が上り坂+最初のコーナーまで約305mしかない小回りコースなので、内枠先行有利が顕著です。レース質は「内枠・先行・延長・スローペース」。位置が取れるという意味で距離延長馬もプラスで、1、2枠に入った前走1600m使用馬が自然にラチ沿い先行するパターンがアツいですね。
一方、芝2000mは4コーナー引き込み線からの発走で、発走地点が下り坂+最初のコーナーまで約505m。下り坂で勢いがついた後、直線の坂を上りつつ先行争いをするのでタフな流れになりやすいのが特徴です。レース質は「内枠・差し・短縮・ハイペース」。特に福島開催は、番組の構成上、直前の他場開催の1800~2000mが先行有利になっているケースが多いので、そのまま福島芝2000mにスライドして出てくると先行馬が多くなりやすく、メンバー構成的にも差しが決まりやすくなります。極論すれば、上級条件では「差せる馬を買っておく」だけでOK。
M イメージしやすいように、初角の距離やスタート地点やゴール前の起伏の入った「立川式コース図」の福島芝2000mを載せておきますね。

『「今週勝つ!」を叶える馬券カレンダー』(画像は電子版)より
立 1800mで先行決着すると、2000mでも騎手の前への意識が高まって差しが届き、2000mで差しが届くと控える意識が働いて1800mで前が残りやすくなるという現象が発生します。今週なら土曜9R浄土平特別(芝1800m)の内枠先行延長馬狙い→日曜11R福島民報杯(芝2000m)の内枠差し短縮狙い、という出し入れがオススメですね。
M 確かに、福島民報杯がGIにみえてきました(笑)。
立 この開催の福島芝コースは全般的に内枠先行有利。芝2000mだけが例外的に差し有利です。わかりやすくいえば、芝1800mはイメージの5倍ぐらい先行有利で、芝2000mはイメージの10倍ぐらい先行不利。だからこそ、その出し入れに馬券妙味があるのです。
あと福島には「ダート1150mの下級条件と上級条件の出し入れ」というお宝ネタもあります。こちらは11月4週で解説しているので、本をお持ちの方はチェックしてみてくださいね。
<枠順確定後の追記>
内枠にテンに速い馬がそろって、日曜は雨が続く予報なので、時計は速いが上がりは出ない高速持続馬場の内枠主導で内枠先行有利と見ます。この枠なら人気どころのエリカエクスプレス、エンブロイダリーは心配ないとして、高速追走経験ありのマピュース、フィリーズレビューで差し決着のハイペースを先行して残したボンヌソワレ。一枚落ちますが、先行するならピップデイジー、ハイペース短縮で位置が取れるならリンクスティップ辺りを評価したいです。(立川優馬)