【競馬人生劇場・平松さとし】今週末、阪神競馬場では
桜花賞が行われる。3歳牝馬3冠レースの第1弾となるこの桜の女王決定戦を、騎手時代に2度制しているのが、
松永幹夫現調教師だ。97年、
キョウエイマーチを駆って
メジロドーベルの末脚を封じると、00年には6番人気の
チアズグレイスで穴をあけてみせた。
そんな
松永幹夫騎手だが、そのずっと前、91年にも絶好のチャンスがあった。デビュー以来5戦5勝、前哨戦も制していた
イソノルーブルとのタッグで挑戦。1番人気に支持されたのだ。ところがオールドファンならよく覚えておられるであろうアク
シデントに襲われる。スタート直前に落鉄。再装着を嫌がり、結果、蹄鉄を履かないまま走って5着に敗れたのだ。
松永幹師が振り返る。「蹄鉄を打ち直そうとしたけど、抑え付けられたためにイレ込んで、尋常でないほど汗をかいてしまいました。これではまともな精神状態で走れない」。そう感じると、案の定だったと言い、さらに続ける。「この時点で自分はまだG1を勝ったことがありませんでした。ここはチャンス到来と思ったらこんなことになってしまい、一生G1を勝てないんじゃないか…と思ったものです」。
しかし、ご存じの通り松永騎手と
イソノルーブルのコンビは、続く
オークスを見事に逃げ切り勝利。人馬共に初となるG1制覇を成し遂げてみせるのだった。もし
桜花賞をすんなり逃げ切れていれば
オークスでのマークは厳しくなっただろう。まさに“人間万事塞翁(さいおう)が馬”を思わせるG1初勝利劇だった。「大外20番枠だったし、正直、厳しいと思っていましたが、ギリギリ粘り込んでくれました。差はわずか(鼻差)だったけど勝ったのは分かりました。とにかく直線が長く感じただけに、G1制覇の味は格別でした」。
今年の
桜花賞、松永幹師は
ハワイアンティアレを送り込む。どんなレースになるのか、この後の
オークスへ続く一戦としても注目したい。 (フリーライター)
スポニチ