東西7人の調教師が3日、70歳定年により引退。ラストウイークに15頭の大攻勢をかけた中野栄治師(70)は1日2勝で有終の美を飾った。2Rは
武豊との“ダービージョッキーコンビ”で制し、キングが騎乗した4RがラストVとなった。
ラストレースとなった中山7R終了後、中野師の周りには大勢の後輩騎手たち。誰からともなく“ナ・カ・ノ!”とコールが上がると、34年ぶりの“ナカノ・コール”が中山競馬場に響いた。照れくさそうな笑顔を絶やさなかった師は「18歳でデビューしてなんだかあっという間でしたね。何にも未練はないですよ」と穏やかに語った。
騎手として競馬の道に足を踏み入れ、
アイネスフウジンで制した90年ダービーは今も語り継がれる伝説。19万人超の観客が「ナカノ・コール」を絶叫し、東京の大観衆が一体と化した。「あれは鳥肌が立ったね」と振り返ったかつての名手。ラストデーの3鞍は
武豊に託し、現代の名手は2R
イーサンハンターで単勝1・8倍の1番人気にあっさり応えてみせた。
武豊は「(中野師の馬で)プレッシャーがあったけど勝ててよかった。調教師室に向かって
ガッツポーズをしました。今日は“ユタカ・コール”が起きてくれたら」と茶目っ気たっぷりに語った。
騎手として24年、調教師として29年。96年に厩舎を開業し、
トロットスター(01年
高松宮記念、
スプリンターズSを優勝)など、5頭の重賞馬を手がけた。「全ての馬に思い入れがあるんだよ。ここまで記録より記憶に残るような仕事をしたいと思って続けてきた。やり残したという気持ちはないですね」。熱狂の90年代競馬シーンを象徴するダービー制覇に、個性派ぞろいの管理馬たち。中野師の足跡は全ての競馬ファンの記憶に残り続ける。
スポニチ